き花のストーリー

き花 のストーリー

こだわりが生んだ、唯一無二の存在

ザクザクした独特の食感を持つアーモンドガレットに、口どけのよいクーベルチュールのホワイトチョコレートをサンド。
「き花」は1982年の誕生以来、多くのみなさまに愛されてきた、壺屋を代表する商品のひとつです。
ところで、皆さんはお気づきでしょうか。
クッキーにチョコを挟むタイプのお菓子はこの世に数あれど、「き花」に似たものはなかなか見つからないことを。
そこには、徹底したこだわりゆえに、他社がマネできなかったのではなく「したくなかった」、壺屋ならではの秘密があったのです。

「手間がかかっても徹底的に
うまいお菓子を作ろう」

はじまりは、「き花」が発売になる2,3年前のこと。
需要不足で工場の稼働率が低くなる夏場に、「草むしりばかりしているわけにもいくまい」という村本正社長の発案で、
季節限定商品の開発企画が持ち上がりました。
「時間がある今、せっかくやるならこだわり抜いた究極のお菓子を作ろうじゃないか」。
当時の村本洋専務、田中工場長、後に技術顧問となる松元靖利が核となりプロジェクトがスタートしました。

夢を追い求める人

  • 村本 暁宣

    村本 暁宣

    壺屋総本店 代表取締役社長

    大学卒業後、福島県郡山市「(株)柏屋」修行のため入社。滋賀県近江八幡市「(株)たねや」
    修行のため入社を経て2003年「壺屋総本店」入社、2021年より代表取締役社長に就任、現在に至る。

  • 村本 暁彦

    村本 暁彦

    代表取締役専務

    IT広告代理店勤務後、輸入商社へ入社。
    「き花」の主原料でもあるアーモンド等の輸入販売に携わる。
    2015年「壺屋総本店」入社。
    国内・海外のより良い原材料を探し求める。

発売当初から「き花」は評判がよく、会社としてはたくさん作って売りたかったようですが、工場としては手間ばかりかかるため作りたがらなかったようです。当時は工場の方が強かったんですね(笑)。
そこで村本正社長が打った手が「モンドセレクション」への出品です。
外部から目に見える評価を得て誇りを持ってもらうことで、製造に後ろ向きだった現場のやる気を引き出しました。
見事な作戦だったと思います。

こだわり抜く人

  • 寺島 一輝

    寺島 一輝

    1977年3月入社。長年、き花専属スタッフとして勤務。
    き花工場の工場長も経験したまさに「き花職人」。

製法や工程など、すべてはマニュアル化されていますが、同じように作っても同じ仕上がりにならないのが菓子作りです。
ただ、これを職人の経験と勘などと簡単に片づけてしまわず、だれもが同じように作れるようにするのが私の務めですね。

手間も、原材料も、「度外視」

1 霧華(きばな)の名前を
イメージして

霧華(きばな)の名前をイメージして

新商品開発にあたってまずヒントとなったのは、一つの造語でした。それは、旭川の凍てつく冬に見られるダイヤモンドダストを指す「霧華(きばな)」という季語。旭川第七師団参謀長を務めた歌人・齋藤瀏氏の創作とされ、詩人小熊秀雄氏も齋藤氏を送る会で「霧華」を題材に歌を詠んだそうです。そんな話をコスモス短歌会旭川支部の故・松田一夫さんに聞いた村本洋専務が、言葉の美しい響きに深く感銘を受け、「霧華」をイメージした商品を作りたいと強く思いました。

2 アーモンドを使って
高級感を演出

アーモンドを使って高級感を演出

「アーモンドを使ってみよう」。最初にベースとなるアイデアを出したのは村本洋専務だったようです(村本正社長、との説も)。
チョコレートとの相性がよく高級感があるアーモンドは、こだわりのお菓子づくりにぴったりの素材。アーモンドパウダーを中心材料に、小麦粉、マーガリンを加えてガレットを焼き上げたところ、ザクザクした食感が個性的で香ばしさも上々でした。ガレットでダイヤモンドダストのキラキラを、ホワイトチョコレートで北海道の凍てつく厳冬を表現した「き花」の誕生です。

3 製法にもこまやか
なこだわり

製法にもこまやかなこだわり

作り方は、まず卵と砂糖、小麦粉を軽く合わせて、溶かしたマーガリン、最後にアーモンドパウダーを入れて混ぜます。卵は泡立てすぎると焼いた時に割れやすくなるほか、焼きの温度が高いと必要以上に硬く仕上がります。試作を繰り返して細部を調整し、2,3年の歳月が経ったころ、「き花」はようやく完成しました。
なお、主原料となるアーモンドは、品質管理の難しい素材です。油分の多寡については砕いてみるまでわからず、気温の変化で味も変わります。そのため、信頼のおける取引先から仕入れることが大切なのです。

4 意外な難関「成型」は
人海戦術で

意外な難関「成型」は人海戦術で

機械化されていない時代は、鉄板に油をひいて材料を絞り、均し、焼き上げ、ガレットの上にチョコレートを絞って、挟むというすべての工程を手作業で行っていました。特に、ガレット生地の元ダネは水分が低く硬いため、均一の厚さにするにはフォークでいちいち均していく必要がありました。洋菓子だけでなく、和菓子のスタッフも総出で鉄板の前に並んで成型するのです。工場の稼働率が低い時期だからできた、まさに苦肉の人海戦術でした。

5 鉄板でじっくり焼き上げる

鉄板でじっくり焼き上げる

1度に焼けるのは300枚程度。特注した鉄板のくぼみの中で焼き上がったガレットは隙間なくぴったりとはまっているので、取り出すことができません。
鉄板を裏返してハンマーで叩いてはがすのですが、そのせいで鉄板のくぼみがゆがんでしまいます。鉄板の寿命の短さもまた現場には痛いところで、「手間の割に儲けがない」「ひょっとすると赤字にならない程度」という効率の悪さ。発売から数年は販売数を限定せざるを得なかったのもよくわかります。

6 チョコレートは
北海道らしいホワイト

チョコレートは北海道らしいホワイト

アーモンドガレットに挟むのは、雪国・北海道らしいホワイトチョコレート。油脂分が多く口どけのよいクーベルチュールを使っています。
複数の油脂分が存在するためテンパリング(チョコレートを溶かして固める際の温度調節)をしっかりして結晶を整え、口どけをよくすることが大切です。ここまで見てきたように大変手間がかかるだけでなく、同類のお菓子と比べて原材料費もかさむのが「き花」の特徴。
他社がマネできなかったのではなく、したくなかった理由がおわかりいただけたでしょうか。

北国銘菓「き花」の名前の原典

北国銘菓「き花」の名前の原典

北国銘菓「き花」の名前の原典は、齋藤 瀏[さいとうりゅう]の歌集『霧華[きばな]』にさかのぼります。
齋藤 瀏は、軍人で二度にわたり第七師団に赴任し通算10年3ヶ月を旭川で過ごしています。昭和2年3月、熊本第11師団旅団長としての栄転に際し、旭川歌話会[あさひかわかわかい](代表 酒井広治[さかいひろじ])は送別短歌会を開催、齋藤 瀏は娘の史[ふみ]と共に出席して歌を残しています。
当時、旭川新聞社に勤務する小熊秀雄[おぐまひでお]はこの旭川歌話会で幹事をつとめ、送別会で霧華という文字を織り込んだ歌を寄せています。
齋藤 瀏は、昭和4年に第二歌集『霧華』を発刊。大正3年から9年までの旭川在任中に詠んだ霧華の題が9首収録されています。北辺の冬の現象を表現する言葉として霧華という造語を編み出したとみられています。
凍てつく氷点下の世界に、光に煌めく霧の美しさに華という字を付して霧華と表現したのでしょうか。
俳句歳時記の冬の季語に、木華[きばな]、木花[きばな]、霧の花、樹霜[じゅそう]などが見られますが、霧花という字句は見あたりません。旭川で齋藤 瀏が特有な言葉として詠いこんだのが初めてとみられます。
大正13年、再度旭川に着任した齋藤 瀏、史親子は大正15年に発足した旭川歌話会にも参加。
昭和2年に短歌誌「霧華」を創刊しますが、4年には「半仙戯(ふららこ)」と改題しています。
昭和21年6月、俳句誌「霧華」(塩野谷秋風[しおのやしゅうふう])が創刊されておりますが、49年12月に「樹氷」(きばな俳句会)と改題されて現在に至っております。
旭川で霧華をテーマにして詠んだ歌人の短歌3首を右に掲げてみました。松田一夫[まつだかずお]歌集『き花凍む街』のあとがきで、松田翁が壺屋総本店の菓名の名付け親として「き花」命名の経緯についてふれております。
「霧華」の想念から発祥し、転じて「き花」と書き表して命名。そのロゴタイプと共に商標登録をさせていただきました。
イメージにふさわしい北海道の叙情的な風景をモチーフとした『き花』は、世界の食品コンクールで36年連続金賞に輝くお菓子として変わらぬ評価をいただいております。

北国銘菓「き花」と短歌の世界 霧華物語

  • 東明の明るむ霧に
    ほのかなる光あつめてさく
    霧華かも

    斎藤 瀏
  • 歌によき霧華に街のうすぐもり
    春に先だちいゆく人かな

    小熊 秀雄
  • から松に霧華な銀に鍼に似て
    人の気配に枝より雰る

    松田 一夫

世界が認めた、美味しさと品質

世界が認めた、美味しさと品質

「き花」はモンドセレクション菓子部門において1987年に初めてエントリー。 以後、高い品質を維持し続けること、その価値を誰もがわかるようにすることを目的に出品を重ねてきました。その結果、翌1988年から現在まで32回の最高金賞を含めて36年連続で金賞を受賞、2011年度には「日本一の最多受賞」として特別認定されました。 この賞には、「き花」をつくる上でいちばん大切な、「おいしさの約束」を守り続ける意思が込められているのです。

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